你好!台中 ~ にいはお!たいちゅう ~留学記

70まじか、ものずきシニアの台湾台中留学生活

中国語五里霧中(その3) 書く

 さて今日は、書く、つまり中国語作文です。

  「書く」と聞いてまず思うのは、私たちの普段の生活のなかでは、文章を書く機会がほとんどないという事実です。そもそも、ペンをとって書く機会が多くない。

  ネットと端末機の圧倒的な普及によって、個人間の連絡やつぶやきは膨大な情報量が飛び交い、例えばこの「はてなブログ」のように、個人が不特定多数の読み手を想定した文章を書き、発表できる機会も自由に開放されました。しかし、レポートを課される学生時代が終わると、ふつうに生活する人が多数の読み手を想定した文章を書く機会は、やはり決して多くありません。書くのは入力するネット通販の申込フォームか、役所の窓口で記載する申込書ぐらいという人がほとんどでしょう。おじさん・おばさんは、それどころではない。生活のために、ご飯を用意するために、やらなければならないことが毎日毎日、次から次へと山ほどあって…。

 ☜ごもっともです。やはり「わたし、中国語を勉強しています」などと言うおじさんは、もの好き以外の何ものでもないのです。このことを深く感じ入りつつ……。

 

 

 では、以下はガラッと頭を転換して書き進めます。「書く」のポイントは(1)何を(2)どのように書くかです。少々順番を変えて、(2)から始めます。

 

(2)どのように書くか

 私と「中国語作文」との関係は、過去7年以上、週一回通ってきた中国語教室がすべてです。  

 教室では受講生が順番に一人ひとり、自分が書いてきた中国語作文を読み上げます。題材は自由で、長さはいちおう4~5文程度です。この間、中国人の先生は発表者の発音をチェックするほか、よく使う表現や誤った表現があれば適宜ボードに板書し、解説します。ほかの受講生は自分の番をぼーっと待っているわけではなく、他の発表者が音読する内容をできるだけ聴き取り、要訂正箇所はどう直せばいいかを考えます。

 このシステムにより、私は毎週少なくとも1篇の作文を書いてきました。書くことは、やはりこのように宿題やレポートとして課されないと、なかなか続かないようです。

 「毎日中国語を書く」方法として、参考書やテキストは日記を書くことを勧めています。いい方法だと思います。☜実は私も何度か始めましたが、いつも数日書いて挫折します。残念。

 

  以上が「どのように書くか」の形式面だとすれば、「どのように書くか」の内容面、つまり文章の実際の書きぶりはどうでしょうか。

 当然のことながら作文は、いくつかの文章(単文)をつなげたものです。単文については、たくさんの例文を眺め、覚え、多くの文を読むうちに、間違いのない文が書けるようになります。そしてもう一つ、書くスキルを伸ばすために大切なことは、慣用構文を多く身につけ、自分が書く作文のなかで実際に使うことです。ここで言う慣用構文とは、「Aだから(なので)B」や「AだけれどもB」、「AしながらBする」「AでなくBだ」「もしAならB」「なんとAだった」「AするためにB」「どんなに(いくら)AでもB」などなど、例の中国語特有の構文・パターンのことです。

 これらの構文の紹介に特化した参考書は多くありますが、私としては、以前のブログでも紹介した『口を鍛える中国語作文』(国際語学社)をがっちり消化することを勧めます。

 まぁ、こうした本は一遍に全部覚えることは無理ですから、何度か復習して覚えるんですね。

 

 そして最後は、作文の論理構成、書き方の観点で言うと文と文のつなぎ方です。

 身辺雑記の作文によくある「こんなことが起きた」→「それからどうした(どうなった)」→「最後にこうなった」というような、「起きるがまま」に記述する場合はほとんど論理構成を意識しませんが、「~なのは、なぜか?」とか「(ある目的)のために何をしたらいいか?」とかのテーマを書く場合は、作文全体を貫く背骨=論理構成を意識すべきだと思います。

   論理構成は建物でいう柱と梁(はり)であって、この基本構造がしっかりしていれば、必ずしも細部の出来は良くなくとも、「納得です…」という感じが生まれます。

 そのほか細かいことですが、例えばいくつかの理由や手段を並べる場合でも、だらだら続けるより、「首先」(まず)「其次」(次に)「另外」(そのほか)といった言葉を置くと、構成が意識され、文章が締まります。☜これ、何にでも使っていいというわけではありませんが。

 

(1)何を書くか

 次は何を、つまり書く題材です

 

 私が通う教室で発表する作文の題材はまったく自由なので、この7年の間には、いろいろなテーマで書いてきました。最も書きやすいのは、「先日、こんなことがあった」や「近く~する」という身辺雑記でしょう。しかし毎週毎週、身のまわりになにか特記すべきことが起こるわけではありません。そうした場合は天候の話でも、「~が好きだ、得意だ」(趣味・好み)でも思い出話でも、何でもOKです。

 

 また、作文だからといって、自分の生活や思ったことを書かなければならないということもありません。私たちが社会生活する中でまず必要とされるスキルは、「自分がどう考えるか、感じるか」を訴える文より、むしろ何がどのように起こったか・起こるかを分かりやすく伝える、つまりは実用文を書く能力なのです。だから例えば、最新ニュースの要点を中国語にまとめるだけでも、立派な作文です。☜実際のところ、気持ちや感情を自然に表現する文章を外国語で書くのは、かなり高いレベルになってからのことだと思います。 

 なお、こうした自由作文とは別に、言わばマストの作文があります。それは自己紹介です。自分はこういう者だ、という作文を一度、数百字程度で書いておくと何かと便利です。この類のテーマとしては、出身地、家族、近所の様子、趣味、健康法、中国語を始めた動機、仕事や職場などがあります。

 最後に参考書。日本人の中国語学習者にとって役立ちそうな作文テーマや書きぶりをまとめて見たい方には、『中国語リスニングチェック』から『中国語リスニングシアター』(駿河台出版社)のシリーズ4冊が参考になると思います。

 

 

 ところで。ここで「ところで」です。

 「読む」と違って「書く」には、どうしても不安感がつきまといます。というのは、「自分の書いた文は正しいのか」「中国人が読んで理解できるのか」について、なかなか自信がもてないからです。(☜中国語で日記をつけるのは確かにいい方法ですが、この点が不安材料なのです。)

 中国語をチェックするには、書いたものを一定の学歴がある中国人に添削してもらうのがベストですが、そこまでやるレッスンを長く続けることは、実際上むずかしいでしょうね。

 また、中国人からの指摘は、ある場合は口語と書き言葉の違い、ある場合は言葉の意味のずれ、ある場合は「文法的には正しいが、中国人はこういう表現は使わない」などいろいろな内容を含んでいて、これらを一度に覚えて次回の作文から完全に修正するのはなかなかむつかしそうです。

 また、以上のような文法要素以外に、書き言葉は(日本語でもそうですが)構成も重要で奥が深く、良い文章を書こうとすれば、きりがないのです。ましてや外国語の作文を書く学習者の場合、単語や文法のチェックに気をとられて、肝心の「何を書くか」が自分で分からなくなるような経験は、よくあることだと思います。

 結局、最初から完璧な文を過度に求めないことではないでしょうか。

 日本語でも何度か読み直さないと理解できないような、複雑な気持ちや感情を表現した文章を中国語で表現するのは、中級レベルではまず無理です。まずは簡単で確実な表現を使い、地道に書き続けて、できるだけ中国人の定期的なチェックを求め、形式面での完成度を年単位で少しずつ上げていくものだと思います。

 

 

 というわけで、書くはこれまでだ。