你好!台中 ~ にいはお!たいちゅう ~留学記

70まじか、ものずきシニアの台湾台中留学生活

台湾とは? に答える本

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 今日はタイトルどおり、「台湾とは?」に答えるお勧め本を2冊紹介します。

 1冊目は司馬遼太郎の『台湾紀行』。ご存知、彼の「街道をゆく」シリーズの1冊です。私が昨年(2017年)春、初めて台湾に観光旅行に出かける前、手にとりました。台湾について一定の予備知識はあるつもりでしたが、あらためて読み応えのある本でした。

 

 この本の冒頭で、司馬は次のように書いています。

「国家とは何か?…中略… これ(台湾)ほど魅力的な一典型はないのである。」

 まったく、台湾の成り立ちと現在をみるとき、国家という存在の功罪を考えさせられます。画像の朝日文庫の初版が1997年出版で、もう20年も前の本ですが、取り上げる題材も書き手の視点も、まったく古さを感じさせません。それは、司馬が「今」を眺めながら歴史を読む眼を持っているからです。もちろん、中国の圧倒的な台頭など、この時にはまだ触れていない題材もありますが、この本が台湾を知るための第一級の入門書であることは間違いないと思います。

 もう一冊は、東山彰良(あきら)の小説、『流(りゅう)』です(画像は講談社文庫版。表紙の風景も、茫漠とした感じがいいです!)。2015年、東山はこの作品で直木賞をとりました。彼は5歳まで台北で育ち、その後日本に移り住んだ台湾人ですが、彼自身は、自分のことを「台湾人とか日本人とか、国籍で自分のアイデンティティを考えない」と言ってます。この作品は、1970年代の台北の街を舞台とする一種の青春成長小説ですが、ストーリーのなかで、最初は旧世代の「記憶」として語られながら、しだいに暗い復讐劇の起点として前面に登場してくるのが、骨肉あい争う国共内戦です。

 事件の謎解きで最後までストーリーを引っ張りながら、同時に家族や悪友や恋やオカルト、文学などをめぐって、台湾の戦後世代の感性を活写しています。文体も若いです。

 

 以上、「台湾とは…?」に答える(と私が思う)新旧2冊の本を紹介しました。いずれも、台湾を知るための好書です。

 昨年、私たち日本人の集団が台湾観光を楽しんでいるとき、現地ガイドのCさんが説明の合間に「台湾の正しい名称は、中華民国という国なんです」と念押ししてました。平和な日本人を前にして、「これだけは言っておかなければ…」なのかもしれません。

 以上の2冊、時間と興味のある人は、ぜひ読むべし。