你好!台中 ~ にいはお!たいちゅう ~留学記

70まじか、ものずきシニアの台湾台中留学生活

汉语と華語

 さて、今日のテーマは、私が勉強している中国語の「呼び名」です。

 誰もが興味をもつテーマ、とは思えませんから、読み飛ばしていただいても、いっこうに差し支えありません。

 

  私が通う華語中心 (センター) のオリエンテーションに出席した日、春学期前からこのセンターに在籍している先輩日本人学生が、われわれ新入生のために資料をつくり、配布してくれました。その中で、「よくある質問」や連絡先、よく使う中国語表現などのほかに、ひとつ面白いことが書いてありました。それは

「みなさんが勉強するのは? 中文:北京の先生が書く日本の参考書は ”漢語” と呼んでいますが (台湾では)NG」(☜「台湾では」の部分は、私=管理者が加えた注です)  

 最初は「そうですか」と読み流したものの、読み返すと、なにかひっかかりを感じました。自分が当然のように使ってきた言葉(用語)が、突然「敵国語」に指定されたような、あるいは、「それ、実は間違いです」と指摘されたような……。

 「漢語」が駄目なら、日本の中国語学習者の圧倒的多数が日々勉強している言葉は、いったい何なのでしょうか? そういう問題じゃない? 名称の問題? 薔薇はなぜ薔薇なのか?

  

 日本のふつうの中国語学習者の知識として、中国語は「汉语」と呼ばれる言葉です (☜ここで言う「日本のふつうの中国語学習」とは、ピンイン簡体字を使って、普通話(プートンフア)を学習することです)。

 この「汉」の字は「漢」の簡体字で、日本人に分かりやすく表記すれば「漢語」です。「漢語」とは何かとなれば、「族が話す言」という意味です。

 一方、「中文」の方は、これまた日本の中国語学習者の知識では、話し言葉だけでなく書き言葉や文字、文学、それに文化まで含めた中国語の総体を指す言葉だ、と教わりました。(だから例えば「私のパソコンは中国語が入力できます」の中国語は、「汉语」ではなく「中文」です。)

 それが台湾に来てみると、そもそも中国語を教える学校の名称が、「華語」センターです(☜この「華語」とは、中国の外、主に東南アジアで使用される中国語を指す言葉だそうです。)

 じゃ、台湾では中国語を「華語」と呼べばいいのかとなれば、そうではなく、あらためて「中文」という呼び方をするようです。しかもその概念は、日本で聞いていた意味とはやや違い、一般的・中立的な「中国語」を指すようです。(後日記:同じ台湾でも学校教育の場では、標準中国語を「国語guo2 yu3」と呼ぶそうです。……なんとも頭が混乱してきます。まぁしかし日本でも、学校で習う教科としての日本語は「国語」と呼びますな。

 

 そこで思うのが、もとに戻って、「汉语」という言葉の意味するところです。

 ある国で話される「××語」という名前には、一見簡単そうで、複雑な背景があります。現実の世界を見渡しても、例えば「アメリカ語」「インド語」という言語は無いし、中南米ではスペイン語ポルトガル語が使用され、現代日本では「朝鮮語」と呼ぶことがなくなりました。

 中国語を「汉语」(漢族が話す言語)と呼ぶ発想を仮に日本に当てはめてみると、日本語は、日本人の主要な民族が大和民族であることから、「大和語」と呼ぶことになります。そこで中国という国を構成民族の観点からみてみると、漢族以外に55の少数民族を抱える多民族国家です。このような多民族の国を代表させる言語であるならば、たとえば国名をかぶせて「中国語」とか、あるいは大風呂敷に「中華語」と呼ぶべきではないでしょうか? 

 結局、その理由は、「漢族が話す言語」が中国という国家で持っている現実の存在感によるのだと思います。すなわち、現代中国でも圧倒的に主体となっている漢民族が、この言葉を古来から地理的にも広く話してきたという歴史的事実が、「漢語」をそのまま「中国語」の位置に置かせているのだと思います。

 しかし、そうした「事実」は、台湾では意味がない。だから…。

 

 

 そういうわけで、汉语と台湾で勉強する華語(ないし「中文」)とでは、使う字体が違う、発音がやや違うといったこと以前に、そもそも呼び名が違うのでした。

 しかし、私思うのですが、台湾に来た語学留学生が

「あなたの勉強したいのは汉语ですか、それとも華語ですか?」

 そう聞かれたら、おそらく彼らの99%の答えは、

「中国語です」ではないでしょうか。

 

 

 今日はここまで。